訪れるたび、心がうごく。
アサヒグループ大山崎山荘美術館は、建物や作品、庭園などそれぞれの魅力が響き合い、何度訪れても新たな発見に出合える場所です。ここでは、美術館の魅力を余すところなくご紹介いたします。
開館30周年記念ムービー
歴史 History
「大山崎山荘」は、関西の実業家・加賀正太郎の別荘として、大正から昭和にかけて建設されました。彼は事業のかたわらランの栽培や、植物図譜「蘭花譜」の刊行にも力を注ぎました。また、ニッカウヰスキー創業にも関わり、亡くなる直前、親交があった朝日麦酒株式会社(現アサヒグループホールディングス株式会社)初代社長・山本爲三郎にニッカウヰスキーの株式を譲り、会社の行く末を託しました。この縁が、現在の美術館へとつながります。加賀夫妻の死後、山荘は加賀家の手を離れ老朽化し、マンション建設の計画がもちあがりましたが、地元有志の方を中心とした保存運動により、アサヒビール株式会社が京都府や大山崎町と連携し、保存・復元を行いました。その後、美術館として開館しました。
提供:加賀高之
建築 Architecture
本館は、加賀正太郎が別荘として設計・監修したもので、イギリス遊学中に目にした風景や建物に着想を得て1912年に建設を開始し、1932年頃に現在の姿となったとされています。おもにイギリス風の様式をとっていますが、関東大震災(1923年)以降に建てられた2階建て部分は、鉄筋コンクリート造りです。美術館開館に際し増築された、安藤忠雄設計による「地中の宝石箱」(地中館)は自然との調和を意識した半地下構造で、クロード・モネの《睡蓮》を常設展示。さらに2012年には、温室跡地に「夢の箱」(山手館)が新設され、自然と一体となる建築美を実現しています。
庭園 Garden
約5500坪の庭園では、四季折々の自然が楽しめます。春はさまざまなサクラが順に咲き誇り、初夏には池に咲くスイレンとクロード・モネの《睡蓮》が響き合います。秋にはモミジとイチョウが鮮やかに彩り、冬にはツバキやナンテンが静かな風景に色を添えます。季節ごとに異なる表情を見せる庭園では、訪れるたびに新たな発見と出合いがあります。
ロケーション Location
美術館が位置する大山崎町は、京都と大阪の府境に接する自然豊かな地です。桂川・宇治川・木津川の三川が合流するこの地域は、水と緑に恵まれ、古くから風光明媚な地として知られてきました。天王山南麗に建つ山荘のテラスに立つと、川を挟んで対岸の男山、遠くは京都南部から奈良の山々と、雄大な景色が目に飛び込んできます。
コレクション Collections
印象派の巨匠クロード・モネの傑作《睡蓮》連作の他にも、朝日麦酒株式会社(現アサヒグループホールディングス株式会社)初代社長・山本爲三郎が篤く支援した民藝運動ゆかりの作品群などをご覧いただけます。ここでは、その一部を紹介します。
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なまこゆうつつがきはなもんはこ 海鼠釉筒描花文筥
1943年頃
奥行14.8×幅14.8×高さ14.5cm
高い技術が要求される蓋物作りに、河井は好んでとり組みました。鋭角な縁となだらかにふくらんだ甲(蓋の上部)をもつこの筥もそのひとつで、堂々とした存在感を放っています。褐色の鉄釉にかさねられた海鼠釉が器体を美しく幻想的に彩り、深遠な世界観をも感じさせます。「釉薬の魔術師」と称された河井の面目躍如たる一品です。
展示予定:2026年 3月20日(金) - 9月6日(日)
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つつがきはなくいどりもんがくざら 筒描花喰鳥文額皿
1952年頃
縦28.5×横18.3×奥行4.0cm
筒描とは、和紙などで作られた筒状の道具に入った化粧土を素地に絞り出し、文様を描く技法で、イッチンともよばれます。河井の筒描の流れるような描線や大胆な文様には、迷いなき潔さが感じられます。自ら考案した形の額皿の見込みには、正倉院宝物をはじめ奈良時代の工芸品に見られる花喰鳥の意匠が描かれており、古典に学ぶ河井の姿勢がうかがわれます。
展示予定:2026年 3月20日(金) - 9月6日(日)
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あめゆうろうぬきあみもんふたつきつぼ 飴釉蝋抜網文蓋付壺
1927年頃
最大径16.4×高さ15.0cm
ぷっくりと丸みを帯びた側面には、漁網をモチーフにした網文がくまなく描かれています。「蝋抜き」の技法では、素焼きをした素地に蝋を含んだ筆で絵付けをし、その上から釉薬をかけて焼くことで、窯の熱で蝋が溶け、釉薬の掛からなかった素地が文様となってあらわれます。濱田が30代前半のころに沖縄の壺屋窯で制作した作品です。
展示予定:2026年 3月20日(金) - 9月6日(日)
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あおかきかけわけしろながしがけおおばち 青柿掛分白流掛大鉢
1960-70年代
最大径55.0×高さ14.7cm
濱田は晩年、堂々とした張りと、口縁部のくぼみをもつ大鉢を意欲的に制作します。本作では、大胆に流し掛けた白釉と、市松模様に配した緑釉・柿釉を組みあわせています。柄杓にすくった釉薬を流し掛け、一瞬のうちに躍動感あふれる文様を生みだす「流描き」は、長年の経験によって培われた高度な技法です。まさに心技一体となった円熟期の一品です。
展示予定:2026年 3月20日(金) - 9月6日(日)
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せいしょのふうけい 聖書の風景
1956年
縦47.5×横64.0cm
光り輝く太陽のもと、教会を思わせる建物を中心とした田園風景と、前景に立って人々に語りかける白い衣のキリストが描かれます。宗教的主題を追求したルオーにとって、風景画は特にその後半生で重要な位置を占めます。鮮やかな色彩と端正な構図、祈りを込めるかのように塗りかさねられた絵の具の盛り上がりが、ルオーの画業の頂点を示す作品です。
展示予定:2026年 9月19日(土) - 12月6日(日)
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かんがえるひと 考える人
1880年(原型)
奥行31.0×幅20.0×高さ36.5cm
岩の上に腰掛けて、頬杖をついて前かがみになり、物思いにふける人物があらわされています。男性の肉体は屈強な競技選手のようですが、深く考え込むようすは静けさを感じさせます。ロダンのもっとも著名な作品のひとつ《考える人》は、13世紀イタリアの詩人で哲学者のダンテ・アリギエーリを表現しようとしたものだといわれています。3種のサイズが鋳造されましたが、本作は最も小さい像です。
展示予定:2026年 12月19日(土) - 4月11日(日)
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りーふもんおおざら リーフ文大皿
1988 - 2012年
最大径30.7×高さ4.6cm
舩木の吹きガラス作品は、熱したガラスの素地を膨らます前の段階で表面に文様が描かれているため、作業には困難を伴います。しかし本作においても、刻々と冷めて固まりゆく高温ガラスを、限られた時間のなかでみごとに操っており、作品中央部には得意の「リーフ文」が大きく描き出されています。周縁部を走る線の濃淡のグラデーションも見どころのひとつです。
展示予定:2026年 9月19日(土) - 12月6日(日)
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プラントレーマー
1988 - 2012年
最大径10.2×高さ18.9cm
舩木はワイングラスからデカンターまでさまざまな酒器を手がけており、ドイツで生まれた白ワインのためのうつわ「レーマー」の作例も多くのこされています。本作では表面に突起状にとりつけたプラントとよばれる丸い装飾が重厚感を与えており、高さおよそ20㎝でありながら荘厳な建築物を思い起こさせるような迫力ある姿です。
展示予定:2026年 9月19日(土) - 12月6日(日)